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第11話 ここは夫婦の寝室じゃない。会議室だ

last update publish date: 2026-09-16 20:06:17

「鷺宮社長。夫婦の話は終わっていません」

 正臣が言った。

「ここは夫婦の寝室じゃない。会議室だ」

 燎は正臣から離れた椅子を引いた。

「ここに座れ、灯里」

「命令しないで」

 言い返した私を見て、白髪の女性の口元がわずかに緩んだ。

「SENOVAで検証を担当する成瀬です」

 彼女は莉乃の正面へ座った。

 私は燎が引いた椅子に座った。

 燎もその隣に腰を下ろし、画面をつけた。

 正臣の隣へ戻るつもりはない。

 燎に守ってほしいわけでもない。

 それでも、彼が隣に座ったことに、ほっとしてしまった。

「会議を始める」

 正常値を示す緑の印が並んだ。

 正臣の血も、昔の台所も、画面の光に押し戻される。

「その前に」

 正臣が榊へ顎を動かした。

 榊が一枚の紙をテーブルへ置く。

 正臣は、私から目をそらさなかった。

「妻は、開発者として判断できる状態ではありません」

 正臣の声は穏やかだった。

 妻を案じる夫にしか聞こえない。

 診断書。

 学校で見せられたものと、同じ医師の名前だった。

 私は、この医師に会ったことすらない。

 それでも
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  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第45話 勝つまで、キスも我慢するつもりか

     燎は笑みを浮かべたまま、すぐには答えなかった。説明会後の控室で、私たちは向かい合っている。  目をそらしたら、冗談にされそうで、私は見つめ返した。  早く答えてほしい。このままでは、何でもいいから欲しいと、余計なことまで言ってしまいそうだった。  燎が、少し顔を寄せた。 「俺の一日をやる。誰にも邪魔させない」  それから、テーブルに置いたままの腕時計へ手を伸ばした。 「それ、明日もくれるの?」 「明日は仕事だ。勝った後は、君の好きにしていい」  時計をつけながら、燎が私を見た。 「仕事でも、それ以外でも」  わざと、最後をゆっくり言った。  その視線が、私の口元へ下りた。仕事以外に何を欲しがるかまで、分かっているのだろうか。 「難しい交渉を全部頼んでも?」 「構わない。だけど、本当にそれが欲しいのか?」  燎は時計の金具に指をかけたまま、私を見た。  口元には悪戯っぽい笑みがあった。そのくせ、私を見つめる目は熱い。  まるで、欲望を丸裸にされているみたいだった。  交渉なんて口実だと、分かっているの?  仕事がなくても二人で会いたい。私だけを見てほしい。  でも、それをどう言えばいいのだろう。 「……何が言いたいの」  私は燎を睨んだ。  燎は小さく笑い、少し軽い調子で続けた。 「それとも、仮説でも聞いてほしいのか」  え?  懐かしい言い方に、私は動きを止めた。  まだ話したいと口にする前に、続きを促してくれる。そんな人が、昔もいた。  顔も本名も知らないまま、夜中まで研究の話をした人。 「あと五分。ひとつだけ、仮説を聞いて」  九年前、私はよくそう言って、その人を引き止めた。反論されれば腹が立つのに、返事が来るのは嬉しかった。  研究の話なら翌日でもよかった。それでも、会話を終わらせたくなかったのだ。  顔も本名も知らない。会ったことさえなかった。でも、あの人から返事が来るのを、毎晩待っていた。  私は確かに、あの人に好意を持っていた。  私は燎の顔を見た。  もし、あの人が、この男だったら。 「……あなたなの?」  燎の指が止まった。 「何のことだ」  私はその顔を見つめた。  あの人も、私が話し足りないことをすぐ見抜いた。まだ何も言っていないのに、続きを聞くつもりで返事をくれた

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